長期線量の計算方法 

福島第一原発事故から3年半以上が経過しました。しかし未だに高い放射線量の場所が
あり、今後の放射線量放射線量がどう変わるか興味のある所です。そこで計算方法を
纏めてみました。

セシウム134と137の割合はなんでも同じ
 以下に
  ・福島第一原発汚染地下水
  ・山梨県産の食品
  ・福島県産の食品
の2014年10月測定分のセシウム134と137の相関を示します

※(1)(2)で作成
図―1 セシウム134と137の相関(2014年10月)

セシウム137に対するセシウム134の割合は同じです。これはセシウム134もセシウム137も
セシウムの「同位体」で(3)で、同位体は電子状態が同じであるため化学的性質は同等です
(4)。だからセシウム134だけとかセシウム137だけが別々に集まることはなく場所や状態に
かかわらず同じ割合になります。
セシウム134と137の割合は時間とともに変わる
 食品中について
  ・原発事故直後の2011年3月
  ・原発事故から3年7ヶ月経過した2014年10月
のセシウム134と137の割合を示します。

 ※1 (1)(5)で作成
 ※2 2011年3月には図の範囲より高濃度のセシウム汚染食品もあったが、図示外とした。
 図ー2 2011年3月と14年10月のセシウム134と137の相関の比較

福島原発事故直後はセシウム137に対する134の割合は1対1でしたが、事故から3年半
以上経過した2014年10月では30%程に低下しています。
 放射性物質は徐々に減っていきます。半分になるまでの時間を「半減期」と呼びます(6)。
セシウム134の半減期はおよそ2年ですが、137の半減期は30年です。セシウム134は2年
で半分、4年で4分の1、3年半で30%程度(0.5(3.5/2))になりますが,セシウム137は30年
たってやっと半分になります。時間がたつとセシウム134の割合はどんどん減って行きます。
ベクレルとシーベルト 
 放射線は1個、2個、3個・・・と数えることができます。そしてベクレルとは1秒間に出る放射線
の数です(7)。もし、放射線が目に見えるとすると3ベクレルの桃は以下のようになります。

 ※(7)より引用
図―3 3ベクレルの桃

ガンマ線の場合は、シーベルトはエネルギーで計算します(8)。放射線のエネルギーを表す
単位にMeV(メガ電子ボルト)を使います(8)。1MeVは6兆2400億分の1ジュールないしは
26200兆分の1カロリー(Kcal)です(8)。セシウム137は0.662MeV、セシウム134は
1.4MeVのガンマ線を出します(9)。詳ししい見積もりよると1平方メートルに100万べクレル
の放射性セシウム134があると空間線量は毎時5.4マイクロシーベルト、セシウム137では
2.1マイクロシーベルトになるそうです。同じベクレル数なら、空間線量にはセシウム134が
セシウム137の2.6倍(5.4÷2.1)の寄与があります。
 以上の情報から、
   現時点の放射線量 v
   セシウム137に対する134の割合(ベクレル) α
としたとき、現時点からt年後の放射線量V(t)を求めることができます、
  V(t)=a×0.5(t/30.17)+b×0.5(t/2.065) -(1)
とします。ただし30.17および2.065はそれぞれセシウム137と134の半減期です(3)。
t=0、すなわち現時点ではV(0)=vですので
  v=a+b
になります。一方、セシウム134が2.6倍強烈ですので
  b/a=2.6α
になります。すなわち
  b=2,6αa
になり
  v=a+2.6αa=a(1+2.6α)
ですので
  a=v/(1+2.6α)
  b=2.6a=2.6v/(1+2.6α)
になります。
また
 0.5=exp(-ln(2)x)
なんて式があります。ただし,Excelで計算すると
   ln(2)=0.693147181
ですので(1)式は
  V(t)=a×exp(-0.023t)+b×exp(-0.336t)  ―(2)
になります。今後の積算線量S(t)は1ミリシーベルトが1000ミリシーベルト、1年が8766時間
(24×365.25、うるう年もあり)ですので、
 S(t)=8.766∫V(t)dt=8.766×a×∫exp(-0.023t)dt+∫exp(-0.336t)dt
で、
 ∫exp(-ct)=(1-exp(-ct)/c
ですから
 S(t)=381a×(1−exp(-0.23t))+26.1b×(1−exp(-0.336t) ミリシーベルト
になります。被ばく線量は積算線量の6割になりますので、被ばく線量H(t)は
 H(t)=229a×(1−exp(-0.23t))+16b×(1−exp(-0.336t) ミリシーベルト
になります。
 最終的な被ばく線量は
  229a+16b ミリシーベルト
になります。

実際は?
 この計算が合っているか否かは実際の放射線量の変化と比較するとわかると思います。花見
山は福島を代表する観光スポットの一つすので(11)、福島市が時々、放射線量を測っていま
す(12)。ただし、私有地なので行政が勝手にいじるわけにはいかないと思います。
 未来を予測して結果を比較はできませんが、過去に遡って結果を比較することは可能です。
9月後半から10月前半について状況をまとめると
 @セシウム137に対する134の割合32%程度

  ※(1)(13)を集計
 図―4 2014年 9月後半から10月前半のセシウム137に対する134の割合

 A花見山の放射線量は平均で1時間当たり0.405マイクロシーベルト
になります。以上の条件を元に過去に遡って計算した試算結果と実測値を以下に示します。

 図―5 花見山の放射線量の実測と計算の比較

 過去1年は計算通りです。2年程度はまあまああっているかなって感じですが、原発事故直後
は全く会いません。原発事故直後はセシウムの他に放射性ヨウ素の影響(9)やウエザリング
効果(14)がありましたが、原発事故から3年以上も経過すると放射性セシウムは福島の台地
に根付き、半減期の減衰以外では減らなくなっているような気がします。

 
 

-参考したサイト様―
(1) 報道発表資料 2014年10月 |厚生労働省
(2) サンプリングによる監視|東京電力
(3) セシウム - Wikipedia
(4) 同位体 - Wikipedia
(5) 報道発表資料 2011年3月 |厚生労働省
(6) 半減期 - Wikipedia
(7) めげ猫「タマ」の日記 ベクレルとシーベルト
(8) 電子ボルト - Wikipedia
(9) 空間線量率の計算
(10) 国(環境省)が示す毎時0.23マイクロシーベルトの算出根拠|東京都環境局 その他について
(11) 花見山公園 公式ホームページ|福島市
(12) 市内各支所等の環境放射線測定結果【市測定】(9月10日更新) - 福島市ホームページ
中の「》市内各地区の環境放射線測定結果 」(下の方にあります)。
(13) 報道発表資料 2014年9月 |厚生労働省
(14) 東京新聞:2年後の空間放射線量 国試算 自然に40%減:3分でわかるQ&A:東日本大震災
(TOKYO Web)

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