1 原子力発電所の役割

 原子力発電所の役割を考えるには原子力発電所がすべて止まったら、
どうなるかを考えればいいと思います。東北電力の原子力発電所は、
2011年3月の震災ですべて止まっています(1)。
 そこで、東北電力を例に
  @この夏はどうなるか
  A来年の夏はどうなるか
を振り返り、原子力発電所の「役割」を考えてみたいと思います。


今年の夏はどうだったか
 東北電力のホームページによると、
    2011年の夏のピーク電力は、1246万kw(8月9日)
    2010年の夏のピーク電力は、1557万kw
です。約20%の削減でした。20%削減しても、実際はぎりぎりでした(2)。
@ 東北電力はどのように、電力を供給したか
 東北電力が8月9日に用意できた電力は、1,302kwです。内訳は、
  東京電力から110万kw
  北海電力から 60万kw(※1)
  残り − たぶん東北電力が調達
です(4)(5)。
 8月9日時点での、東京電力の原子力での発電量は318.2万kwでした(6)。また、北海道
電力の原子力での発電量は、149.1万kwでした(5)。原子力発電がなければ、東北電力は外
から電力をもらえない可能性があったと思います。
 東北電力が自前で供給できた電力は
     1、302−170=1,132万kW
です。ピーク時の需要の1,246万kW対し100万kW以上足りません。もし、原子力発電所がな
ければ、2010年の夏は例え節電したとしても、停電が発生したと思います。

※1 北海道電力は、60万kwの電力を本州に送っていました(4)。これは、東北電力が30万
kw、東京電力が30万kwのようです。でも、東京電力分の30万kwも東北電力が使うことに
なったみたいです(4)。

 
A 東北電力の来年の電力需要はもっと増える
 以下の表は、2010年と2011年の各県のピーク電力を比較したものです。各県を、日本海側
に県庁所在地があり、震災の被害がないか、微小な県(秋田・新潟)と、県庁所在地が、太平
洋側か内陸にあり、震災被害が大ききか、受けたと思われる県(青森、岩手、宮城、山形、
福島)の二つのグループに分けました。
  @ A (@−A)÷
@×100
地域(県名) ピーク電力 削減率
2010年 2011年
震災被害
微小
秋田 142 123 13.4%
新潟 356 307 13.8%
小計 498 430 13.7%
震災被害
大または有
青森 150 122 18.7%
岩手 162 130 19.8%
宮城 290 213 26.6%
山形 170 136 20.0%
福島 304 235 22.7%
小計 1076 836 22.3%
東北電力全体※1 1557 1246 20.0%
※1 ピークとなった日が違うため、各県の合計が東北電力全体とは一致しない。

東北電力全体では、20%の削減に成功していますが、被災しなかった県では13.7%の削減
でしかありません。被災した各県の削減率が高いのは震災で、落ち込んだ電力需要が回復
していないだけだと思います。もし震災被害がなければ、東北電力全体の削減率で
13.7%になるので、2011年のピーク電力は、
  1557×(100-13.7)÷100=1,349万kw
になっていたと思います。

原子力発電所が機能しなくなったら
@ 発電所は直ぐに作れない
 原子力発電所が止まって、電気不足になるなら大急ぎで発電所を作れば良いと、考える人も
いるかと思います。発電所を作るには、数年は必要だと思います。いま、中部電力の上越火力
発電所が建設中です。2011年7月には、発電を始めるそうです。発電所の工程表が中部電力
のホームページに出ていました(7)。試験調査が始まったのが2005年4月で、発電所本体の
工事は、2007年3月に着工し、発電を始めるのが2012年7月です。7年以上もの時間が必要
です。発電所は直ぐに作ることはできません。
A 2012年は30%近い節電が必要?
 原子力発電所を全部止めたら、どれだけ節電しなくてはならいか。東北電力の場合、
  供給力は1,132万kWです。
  過去の需要は1,557kWです。
必要な節電は
  (1,557-1,132)÷1,557×100=27.3%
です。原子力発電所を動かさければ、今年の倍以上の30%近い節電が必要になります。考え
てみれば当然かも知れません。日本の発電の30%は原子力発電が賄われています(8)。原子力
発電所が機能しないなら、30%の節電になるのは当然だと思います。
B 二酸化炭素(CO)をどうする
 福島の事故のあとあまり耳しなくなりましたが「地球温暖化」の問題があります。
i以下の図は、気象庁が測定している日本での二酸化炭素濃度です。


 ※出典は気象庁(9)
図 日本付近での二酸化炭素濃度の推移

そして、したの図は、日本の主要都市の平均気温の推移です。


 ※気象庁のデータ(10)を集計
図 日本の主要都市の年平均気温推移

確実に気温が上昇しています。たぶん、二酸化炭素対策は待ったなしだと思います。原子力
発電所の二酸化炭素は排出量について、トータルでみれは、火力に比べ小さいわけではな
いとゆう意見もあります(11)。でも、既存の原子力発電所を運転する場合は、火力に比べ
大幅に少ないる思います。
 2005年の柏崎刈羽原子力発電所の
   総発電量       −4,471,939.2万kWh (6)記載のデータより「猫」が集計
   二酸化炭素排出量 −8,780t (11)
ですので、1kWh当たりの二酸化炭素排出量は
    0.000197 kg/kWh
です。一方、東京電力全体では
    0.339kg/kWh
です(12)。
 既存の原子力発電所を運転することで、どれだけ二酸化炭素の排出を減らせるかわかると
思います。

3 最後に
 このホームページで、原子力発電所を擁護しているのはこの部分だけです。あとは、反原発一色に
近い内容です。おおむね
@ 積算線量1mSvで3日寿命が縮む
A 原子力発電所は地震や水害を起こす。
B 福島第一原子力発電所の事故は、想定外でなく必然であった。
この記載は、色々なデータを解析する十分に可能性があると思っています。では、原子力発電所から
の放射線で体に影響が出て、排熱で地震や水害が起こる。でも、電力不足で熱中症で死ぬのと
どっちがいいのでしょうか?

参考にさせていただいたサイト様
(1) 原子力情報|東北電力
(2) 支店別最大電力実績はこちら
(3) 東京電力株式会社から当社への電力融通について
(4) 水力発電所の復旧状況について
(5) 東日本大震災に伴う災害復旧応援の状況について(第16報:4月26日 15時00分現在)
(6) TEPCO : 柏崎刈羽原子力発電所 | トップページ内データより推計
(7) 概要
(8)
(9) 気象庁 | 二酸化炭素濃度の経年変化
(10) 過去の気象データ検索
(11) 知られざる原子力からのCO2排出実態
((12) http://www.tepco.co.jp/eco/co2/pdf/co2-coef.pdf


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