3 放射線の単位

 ニュースをみると、ベクレル(Bq)とか毎時マイクロシーベルト(μSv/h)とか、シーベルトSvなんて
単位が出てきます。そこで、これらの単位を「猫」なりに説明します。


ベクレル(Bq)について
 放射線の単位で、直感的にわかりやすいのがベクレル(Bq)です。定義は簡単です。1秒間に、出た
放射線の数です。500Bq/Kgの放射性セシウム汚染牛肉からは、1kgあたり500個の放射線が飛び
出します。たとえば、この牛肉を1Kg食べると、1月では500×3600×24×30=1,296,000,000(13億)
個の放射線にさらされることになります。
 詳しくはベクレル - Wikipediaを見てください。

※ベクレルは放射線の元がどれだけあるかを示す単位です。


シーベルト(Sv)について
 シーベルト(Sv)は、おおむね放射線から受けたエネルギーを表します。1Svは、1kgあたり1/4200Kcal
のエネルギーを浴びたことになります。たとえば、体重50Kg人が、1シーベルトの放射線を浴びると、
 50/4200Kcal=1/84KCal(84分の1カロリー)のエネルギーを放射線から浴びたことになります。
なお、厳密には生物学的な効果を見込み、係数で補正しています。詳しくはシーベルト - Wikipediaを見てください。

※ シーベルトは放射線をどれだけ浴びたを示す単位です。


毎時μSv(μSv/h)
 ニュースではよく、放射線量としてμSv/hなんて単位が出てきます。仮に1μSv/hとすると、1時間当たり百万分
の1シーベルトの放射線を浴びるとの意味になるます。μSv/hは、シーベルト(Sv)とは違い、1時間でどれだけ、
放射線を浴びる(被ばく)かを示す単位です。正確には放射線量でなく放射線量率を表します。ついでにゆうと
μ(マイクロ)は、百万分の1を示します。
 仮に1μSv/hのところに1年間いると
  1×24×365÷1,000,000=0.000876Sv
の被ばくになります。エネルギーに変換すると、放射線から約3.7Kcalのエネルギーをもらったことになります。

μSv/hは、今どれだけ放射線を浴びているかを示す単位です。車のスピードを表すようなものです。時速40Kmで
2時間走ると80Km移動するのと同じで、1μSv/hの所に2時間いると、100万分の2シーベルトの放射線を浴びる
ことになります。

※ 毎時μSv(μSv/h)は、今、どれだけの放射線が出ているかを示す単位です。シーベルト(Sv)とμSv/hの
関係は、乗り物の速さと移動距離の関係に似ていて、放射線を浴びている時間を掛け算すると、浴びた放射線の
量(シーベルト)になります。


小さくなった時の単位
 ニュースなどで、福島市の線量率が1μSv/hやmSvのように最初にμやmのついた単位が出てきます。そこで、
μやmについて説明します。μは100万分の1をmは千分の1を表します。ですから、1μSv/hは、1時間当たり
100万分の1Sv(シーベルト)であることを表し、1mSvは0.001Svになります。このように小さい数字を見やすく
するために、単位の最初にm,μ,n,pなどをつけて、その分の0を減らして表示することがあります。以下、簡単に
説明します。

①m(ミリ)は1000分の1を示します。
 1mgは1000分の1g
 1mmは1000分の1m
です。
②μ(マイクロ)はm(ミリ)の1000分の1(すなわち100万分の1)を示します。
 1μgは1000分の1mg(すなわち100万分の1g)
 1μmは1000分の1mm(すなわち100万分の1m)
です。
③n(ナノ)はμの1000分の1(すなわち10億分の1)を示します。
 1ngは1000分の1μg(すなわち10億分の1g)
 1nmは1000分の1μm(すなわち10億分の1m)
です。
④p(ピコ)はnの1000分の1(すなわち1兆分の1)です。
 1pGは1000分の1ng(すなわち1兆分の1g)
 1pmは1000分の1nm(すなわち1兆分の1m)
です。


大きくなったときの単位の変更
放射線では非常に大きな値を扱うことがあります。たとえば、100gのセシウム134の放射性物質
量は5000兆ベクレルです。値が大きくなると単位の前にk(キロ)、M(メガ)、G(ギガ)、T(テラ)など
をつけ、大きな数字が表しやすくなりまと見やすくなります。その規則を以下に説明します。
①K(キロ)は1000倍を表します。
 すなわち、
  1000gは1Kg
  1000mは1km
です。
②M(メガ)はK(キロ)の1000倍(100万倍)を示します。
 すなわち
  1000Kgは、1Mg(1トン)
  1000Kmは1Mm(100万メートルまたは10万km)
 です。
③G(ギガ)はM(メガ)の1000倍(10億倍)を示します。
 すなわち
  1000Mgは1Gg(1000トンまたは1kトン)
  1000Mmは1Gm(10億mまたは100万Km)
 を表します。
④T(テラ)はM(メガ)の1000倍(1兆倍)を示します。
 すなわち
  1000Ggは1Tg(1兆g、百万トンまたは1メガトン)
  1000Gmは1Tm(1兆mまたは10億km)
です。



エネルギーを当たらす単位 ジュール(J)
エネルギーにはいろいろな単位がありますが、基本となるのが
J(ジュール)です。Jの定義は、めんどくさいので説明をしませんが
色々なエネルギーをジュールに変換してみますので、感覚がわかればいいと思います。

①1Kcalは4200J
 私たちは、栄養の計算でKcal(キロカロリー)を使います。まず、1Kcalは4200Jで
あることを知ってください。

②ジョギングすると
 体重50Kgの人が1Kmジョギングすると、50Kcal すなわち210,000Jのエネルギー
を使います。
★1Kmのジョギングで、体重と同じカロリー(体重50Kgなら50Kcal)を使うそうです

③缶ビール(350ml)を一本飲むと
 今、手元にある缶ビールには100ml当たり42Kcal、すなわち176,4000Jのエネルギー
と書いてありました。350ml缶なら3.5倍ですので、617,400Jになります。

③100Wの電化製品を1時間使うと
 360,000Jです。(ワット数×使用時間(秒)が使ったエネルギーになります。)

④時速100Km/時の野球ボールのエネルギー
 約56Jです。
 (ボールの重さを145gとして)
 200Km/時では倍ではなく4倍の232Jになります。
 運動エネルギーは
  秒速×秒速×重さ(Kg単位)÷2
なんて式があるそうです。

⑤1Kgのものが1m落下したときの運動エネルギー
  9.8Jです。
  1Jは、重さ1Kgの物体が1m/s2の加速度で1m移動した時のエネルギーとして定義して
います。加速度とは、1秒あたりどれだけスピードを増すかで規定しています。たとえば1m/s2
の加速度ですと1秒後には1m/s,2秒後には2m/sになります。

2項の1Sv(シーベルト)で吸収するエネルギーをJ(ジュール)にすると、1Jになります。おおまかには1kgの物体
が、1J(ジュール)のエネルギーを放射線から吸収すると1Sv(シーベルト)になります。


放射線一つのエネルギーを表す単位
 放射線1個のエネルギーを表す単位にJ(ジュール)を使うのは大きすぎて不便です。そこ
で、eV(エレクトンボルトまたは電子ボルト)を使います。
 1電子ボルトは0.0000001602pJ(1.602×10-19J)
です。また
 1Jは、6,242,000TeV(6.24×1018eV)です。
だいぶ桁が違うのですが、単位の換算でしかありませんので、難しく考えないでください。

<余談>
 電子は-の電気(正確には電荷)をもっています。+の電気があるところに吸い寄せられます。
電気を通す2枚の板に、1Vの電池を繋ぎます。

マイナス(-)側の板から、電子を放つと電子は「-」の電気(正確には電荷)をもっていますので、
+側に引き寄せられます。移動するにはエネルギーを使いますが、+側の板に到着したときの
電子のエネルギーを1eV(電子ボルトまたはエレクトロンボルト)としています。ちょっと、難しい
言葉でかくと「電子1個を1Vの電位差で加速したときのエネルギー」が1eVの定義です。

下の表にいろいろな放射線のエネルギーと身近な物の分子1個当たりのエネルギーをまとめてみました。
物質名 状態 エネルギー 温度 備考 エネルギーの出典
電磁波 光(緑) 2.5eV 3万℃ 500nmとして計算 「猫」の計算
X線 10KeV 1億2千万℃ 10KeVのX線で計算 「猫」の計算
γ線 0.6617MeV 77億℃ セシウム137で計算 セシウム137 - Wikipedia
電子 電流 0.015peV -273℃ 出典では4.4mm/分 電流 - Wikipedia
β線 0.512MeV 59億度 セシウム137で計算 セシウム137 - Wikipedia
ヘリュウム
(原子核)
風船の中 0.0248eV 26℃ ボルツマン定数 を引用 ボルツマン定数 - Wikipedia
α線 4.267MeV 500億℃ ウラン238で計算 ウラン238 - Wikipedia

セシウム137から出るγ線1個当たりのエネルギーは0.6617MeVです。これをJに換算すると0.1pJになります。
温度に換算すると、77億℃と高いのですが、エネルギーとしてはわずかです。これが、放射線の特徴だと猫は
思います。温度は高いのですが、エネルギーが小さいので物質の中に入るとすぐに冷やされて火傷はしません。
でも、温度が高いので、普通の熱以上に分子を壊す力があります。ただし、壊れる分子の数はほんの少しです。

W(ワット)について
 発電所の単位でWがよく使われます。そこで、W(ワット)について説明します。ワットは1秒間のどれだけ
のエネルギーを使ったかで表します。
 ①1秒に1Jのエネルギーをつかうと1Wです(これがW(ワット)の定義です)。
 ②体重50Kgの人が、時速7.2Kmでジョギングすると、一時間当たり360Kcalすなわち、51、200Jの
  エネルギーを使います。Wに直すには、1時間が3600秒ですので
   51,200÷3600=420W
 になります。
 ③100Wの電化製品を1時間使うと100×3600(1時間の秒数)=360、000Jのエネルギーを使い
  ます。
 ④エンジン出力が70KW、重さ1000Kgの車をアクセル全開で発進すると、1秒後には時速40Kmを
  超えている。
   a)出力が70KWですので、1秒後には70KJ(70000J)のエネルギーを持ちます。
   b)時速40Kmは秒速11.1mです。
   c)運動エネルギー=重さ×秒速×秒速÷2ですので、計算すると61Jが必要となりますが、
    70Jのエネルギーが溜まっているので、時速40Kmは超えられます。




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